資金が足りない、銀行や信金からお金を借りたいと誰しも一度は考えたことがあると思います。
融資を受けるためには、「決算書」と「事業計画書」を金融機関に提出する必要があります。
そして、金融機関は「決算書」と「事業計画書」を分析し、貸し付けた資金が回収できると判断することにより、融資を実行します。
このため、金融機関が融資できると判断する「決算書」と「事業計画書」を作成することが大切になります。ここでは融資に強い「決算書」について記載します。
決算書は、自由に作成して良いわけではなく、会計基準というルールに従って作成します。
では、財務数値が完全に同じ会社がある場合、その決算書も完全に同一になるのかというとそうではなく、実際には会計基準というルールの範囲内で、会社の実態に合うよう決算書を作っていくことができます。
言い換えると、同じ経営成績、財政状況の会社であっても、作り方によって決算書は変わります。このため、融資に強い決算書を意識して作ることができます。
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損益計算書の作成
収益、費用の内容は、下表の1~7のいずれかに表示させるのですが、融資に強い決算書として、以下の考え方に従い作成します。
税引前当期純利益が同じ2つの会社がある場合、売上高(本業の収益)もしくは営業利益(本業の儲け)が大きい会社の方が融資に強い。
売上高(本業の収益)もしくは営業利益(本業の儲け)も同じ数値の会社であれば、経常利益(本業や財務などを含めた経常的な儲け)が大きい会社の方が融資に強い。
具体的には、収益は、1売上高、4営業外収益、6特別利益の表示のうち、可能な限り、下表の数字の小さい方(1売上高、4営業外収益、6特別利益の順)に計上できるよう作成します。
費用は、収益とは逆に、2売上原価もしくは3販売費及び一般管理費ではなく、5営業外費用、7特別損失の表示のうち、可能な限り、下表の数字の大きい方(7特別損失、5営業外費用、2売上原価もしくは3販売費及び一般管理費の順)に計上できるよう作成します。
1 | 売上高 |
2 | 売上原価 売上総利益 |
3 | 販売費及び一般管理費 営業利益 |
4 | 営業外収益 |
5 | 営業外費用 経常利益 |
6 | 特別利益 |
7 | 特別損失 税引前当期純利益 法人税、住民税及び事業税 税引後当期純利益 |
収益計上の留意点
特別利益
特別利益は、土地建物の売却利益など、経常的に発生するものではなく、臨時的に発生したもので、かつ、金額が大きい勘定を表示する項目です。
めったに発生しない突発的な性質ではなく、経常的に発生する性質であれば、4営業外収益に計上できないかを検討します。
営業外収益
営業外収益は、貸付金に対する受取利息など、本業の収益獲得には関係しないが、経常的に発生する収益を表示する区分です。
営業外収益に計上している収益のうち、副業ではなく、本業と考えるものはないでしょうか。
会社が本業と考えているものがある場合は、売上高への計上を検討します。
新たに売上高に計上することになった事業が、会社の定款に記載していないようでしたら、会社の本業であることを示すため、定款を変更し、会社登記の変更もします。
費用、損失の留意点
売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価と販売費及び一般管理費は、本業による収益(売上)を得るために必要な仕入や経費を表示する区分です。
本業を得るために必要な仕入や経費以外の項目が入っていないでしょうか。
本業を得るために必要な仕入や経費以外の項目がある場合、営業外費用や特別損失へ計上します。
営業外費用とは、借入金に対する支払利息など、本業から発生する経費以外で経常的に発生する費用です。
特別損失とは、土地や建物の売却などで単発的に発生する損失や災害などで発生する異常な損失で、かつ金額が大きいものを表示する区分です。
その他、本業による収益(売上)を得るために必要な仕入や経費である一方、臨時的かつ異常な項目はないでしょうか。
例えば、事業構造を改革するような過程で発生した建物移転引越関連費用、商品除却費用、各種リストラ費用などが発生しているのであれば、特別損失に計上することを検討します。
上場会社や上場準備会社でなければ、大口得意先の貸倒損失や役員退職金などは、臨時的かつ金額が大きいものであれば特別損失に計上することで、毎期経常的に発生する費用ではないことを金融機関に示すことも重要です。
上記をもとに損益計算書を作成すると、融資に強い決算書に近づきます。
ただ、あくまで会計基準というルールの範囲内で行わなければなりません。
深く検討せず、どんどん特別損失に計上し、特別利益を営業外収益や売上高に計上してしまうと、最終利益は変わりませんが粉飾的な決算となってしまい、金融機関の審査でも信頼の置けない決算書と判定されてしまい本末転倒です。
融資に強い決算書を作成するためには、知識だけでなく、その知識を使って会社の実態を現していて、かつ、財務諸表が不自然ではないというバランス感覚が必要です。
財務の強い会社となり、金融機関に信頼され融資に強い決算書を作成したいという会社様こそ、専門的知識がある税理士の関与が必要です。
融資に強い決算書を作成したい会社様は、まずは当事務所の無料相談からお問い合わせください。