税務調査の流れを記載します。
税務調査先の選定は、しばらく税務調査に入ってない会社のうち、前年と比較して売上高や利益が大きく動いている会社、同業他社と比較して損益水準が著しく乖離している会社など、もしくは反面調査や申告内容から誤りがあると考えられる法人が選定されることが多いです。
この点から、税務署から見て、税務調査しても追徴できそうもないと思わせる決算申告書を作ることがひとつの重要なポイントなのですが、ここでは、税務調査に入ることが確定した場合の流れについて記載します。
税務調査には強制調査と任意調査があります。強制調査は悪質な不正に対する令状をもって行われる調査ですので、通常では任意調査になります。
任意調査では、税務署より調査の事前通知があります。
なお、任意調査であっても、税務署が事前通知をすることで、会社に違法行為を隠す時間を与えてしまうなどと判断したときは、事前通知なく抜き打ちで行われる場合もあります。
もっとも、事前通知のない抜き打ち検査の場合は、税務署が事前通知をしないと判断した理由を確認し、その妥当性や抜き打ちでなくとも目的は達成できることについて、税務署と交渉できる可能性があります。
そして、事前通知がある場合、税務署から経営者もしくは顧問税理士に、調査対象の税目・対象期間・帳簿書類の通知があり、税務署と互いに都合の良い日程を調整し、税務調査の日時が決まります。
税務署から用意しておくよう連絡を受けた帳簿書類を税務調査日までに揃えます。税務調査で遡る期間は、3年分から無申告の場合など5年分となります。
しかし、不正行為がある場合は7年間遡ることもあります。
会社の税務調査で事前通知される一般的な書類です。
- 会社概要
- 株主総会議事録などの各種議事録
- 申告書一式、総勘定元帳、固定資産台帳、棚卸表、預金通帳
- 契約書、見積書、発注書、納品書、請求書、領収書などの証憑
- 源泉徴収簿、扶養控除等申告書
付箋やメモなどがあれば、事実関係を確認します。
また、決算書の資産、負債、収益、費用の内容について調査で指摘されそうな点を把握し、契約書や根拠資料を確認し問題ないことを確認しておきます。
また金庫や机の引き出しを確認されることもあるので、金庫や引き出しの中も整理しておきます。
顧問税理士もしくは税務調査を依頼した税理士がいれば、揃えた書類を確認し、不足資料があった場合の対応方法、決算書から税務調査で指摘されそうな点を確認して、事前にどのように回答していくかのシミュレーションを行うことができます。
税務調査は、朝10時からスタートすることが一般的です。初日の午前は、会社の事業内容や概況など全般的な質問をされ、徐々に具体的な調査に入っていきます。
そして、12時から13時までお昼、13時から開始し、16時ごろ終了するのが一般的です。
調査2日目以降については、誤っている可能性が高い取引や勘定科目を中心に調査が進んでいきます。
税務調査官は資料を確認し、疑問点等を随時質問してくるため、この質問に適切に回答していく必要があります。
調査の1日の流れは初日と同じですが、2日目もしくは3日目などの調査終了日に、懸念事項についての説明があり、ここでの説明事項について、税務署で対応方法が検討されることになります。
税理士が税務調査に立ち会う場合、税理士が、税務調査官の質問に対して適切に回答し、調査官の主張に対して税法、通達、判例を根拠に適切に主張していきます。
調査官の不当な主張を認めてしまことがないよう、税法、通達、判例を主張すれば足りるのか、グレーゾーンのため交渉的に主張していく必要があるかなどが税理士の腕の見せ所となります。
税務署において対応方針が決定されると、税務署から結果の連絡があります。
税務署からの否認事項について同意する場合は、自ら修正申告し、追徴額を納税します。
一方、税務署の決定に同意しない場合は、交渉することになりますが、税務署が意見を変更しない限り、税務署から更正通知書というものが届きます。
更生通知書は、会社である納税者の同意なく、納税額を強制的に決定した追加税額が記載されたものです。
この段階で税務署の決定に従う場合、更正通知書に記載の税額を払うこととなります。
なお、更正通知書に記載の税額の他、過少申告加算税、延滞税が生じ、隠して税金を少なく申告していた場合は重加算税も課せられることになります。
税務署からの更正通知書は一方的に届くのですが、税務署が強制的に決定したものであるため、納税者である会社が納得していない場合、不服申立等、税務署に対して取消しを求めることができます。
一般的な不服申立ての手順としては、以下の手順を踏みます。
- 異議申立て
更正処分から2カ月以内に、税務署に対して、異議申し立てをします。 - 審査請求
税務署に対する異議申立てが認められない場合、異議申立ての決定から1カ月以内もしくは異議申立てから3カ月経過したのち、国税不服審判所に対し、処分の取消しや変更を求める審査請求をします。
なお、税務署の更正処分の前に、税務署の推奨により会社が修正申告してしまった場合は、会社は税務署の判断を認めたとして、不服申立ての手続きはできません。
しかし、この場合でも、会社は更正の請求をして、税金還付の可能性につなげることはできます。
上記2つの手続でも、税務署による更正処分に納得できない場合は、国税不服審判所の判断があったと知った日から6カ月以内に、税務訴訟を提起することとなります。